「安定」を捨て、僕は公務員を辞めた——後悔はない。
公務員と聞くと、多くの人は「安定」「高収入」「充実した福利厚生」など、恵まれた環境を思い浮かべるかもしれません。確かに、僕もそう思っていました。しかし、22年間の公務員生活を経て、理想と現実のギャップに苦しみ続けたのです。
「このままで本当にいいのか?」 「もっと自分の力を試してみたい」
そんな葛藤を抱えながら、僕はついに転職を決意しました。
この記事では、僕が公務員を辞めるに至った2つの理由と、その過程で経験した3つの出来事を赤裸々に綴っています。
もしあなたが今の仕事にモヤモヤを感じ、「このままでいいのか?」と悩んでいるなら、ぜひ読み進めてみてください。僕の経験が、あなたの選択肢を広げるヒントになるかもしれません。
安定だけど物足りなかった…心にあった「モヤモヤ」

公務員=安定している
これがよく言われる公務員に対する第一印象だと思います。
公務員が安定していると言われる理由はいくつかあると思います。
- 収入が安定している
- 解雇のリスクが低い
- 福利厚生が充実している
- 社会的信用度の高さ
- 経済不況への耐性
- 離職率の低さ
特に、「収入が安定している」「解雇リスクの低さ」「福利厚生が充実」「社会的信用度の高さ」は民間企業に転職してからさらに実感しました。
収入は年功序列があるため、長くいればいるほど上昇していきます。景気に左右される度合いも、全く無いわけではないですが、民間企業ほど顕著じゃありません。
解雇リスクについては、公務員の定員削減はあるものの、倒産リスクがないことは大きなアドバンテージです。懲戒免職以外は、依願退職、定年(勧奨)退職などで離職する感じです。
福利厚生は、結構高いと思います。健康保険、年金の両面で充実しています。そのほか付加給付や部外委託した福利厚生サービス、共済組合などのサービスが充実しています。
社会的信用度というところでは、クレジットカードを新規で作ったり、ローンの審査が通りやすいといったことがあります。地方都市では、公務員というだけで「きちんとした人」と言われることもありました。
これだけ優遇されているのになぜモヤモヤがあるのか
それはこの安定が関係しているのかもしれません
安定(保証)されている=やってもやらなくても結果は同じ
成果を上げても、評価されにくいことが現実的に起こり得ます。このことが、「やりがい」「達成感」「充実感」を感じにくい原因ではないかと思います。
私の中でももやもやは、仕事に「やりがい」「充実感」「達成感」を感じにくいところにあったのだとおもいます。
転職を決意した2つの理由

公務員としての生活に不満はない、湧き上がる違和感
私が公務員からなぜ転職しようとしたのか、思い返すと次の2つだったと思います。
- 自分の価値観とのズレ
- やる気を失わせる出来事の数々
具体的にどんなところにそう思ったのか紹介します
理由1 自分の価値観とのズレを象徴する3つのエピソード
①公務員組織における業務改善提案の問題
役所においても業務改善を推奨する一方で、実際には変化には消極的です。その原因は3つあると考えます。
1つ目は、職場のマインドです。「今まで問題がなかったから」と、現状を望む組織風土は、新たなアイディアに対して消極的です。特に自分たちの業務プロセスに影響があるようなものであれば、合理化・効率化に紐づくものであっても、問題がないと言う理由で不採用になることがありました。
しかし、組織としては業務改善の提出を求められますので、結局は、ちょっとした様式の変更のようなものが採用されることが多く、「とりあえずやりました」といったアリバイ作りのようなものが多く、自分が思う業務改善とは違うと感じました。
2つ目は、予算の制約です。費用対効果は大切です。小規模な改善であれば、大して費用をかけず実行できますが、大がかりな改修が伴う改善提案などは事業化して予算要求する必要があります。役所の場合は事業の立ち上げから予算査定までは通常2年かかります。私のいた組織では3年間で異動する人事管理が基準となっていましたので、業務改善がうまく引き継がれなければ長期的な視点での改善が難しい状況でした。
3点目は、業務改善のシステムです。業務改善提案を行うにあたっての、目的や思考過程、方法の説明が殆どの場合省略されています。多くの職場で「毎年やっているから」で説明して肝心の中身の説明ができる人は殆どいないと思います。
業務改善提案に対する評価システムにも問題があると考えます。採用されても、報奨金などは無く、よくて表彰され賞状がもらえるくらいでした。真面目にやればやるほど労力が増す。そのため、なにか出せばいいといった風潮が蔓延し、とりあえず作ったという提案書がたくさん提出される状況でした。
このように、「今あるものをより良いものにしよう」という気持ちが強ければ強いほど、現状とのギャップを感じ、物足りないと思うようになりました。
②公務員組織における考え方のズレ
公務員組織では、目的よりもプロセスが重視される傾向があります。私自身、目的を達成できるのであれば、プロセスは柔軟に変えても良いと考えていました。しかし、役所ではプロセスの堅持が重要視され、しばしば考え方の違いに悩まされました。
例えば、業務改善の提案をした際、『前例がない』『リスクがある』といった理由で却下されることがありました。私としては、まずは試してみて、ダメなら修正すれば良いと考えていたのですが、役所では失敗が許されないという考え方が根強く、新しいことに挑戦しにくい環境でした。
もちろん、公務員組織には、住民の安全や公平性を守るために、プロセスを重視する必要があるという側面もあります。しかし、変化の激しい現代社会において、柔軟性を欠いた組織は、時代に取り残されてしまうのではないでしょうか。
私は、目的を達成するために、プロセスを柔軟に変えられる組織こそ、これからの時代に求められる組織だと考えています。
③問題解決に対する考え方の違い
新たな状況や突発的な事案が発生した際、私と組織との考え方の違いが顕著に表れました。何か問題が起これば、私はすぐに解決策を考え、行動に移したいと考えます。しかし、組織では、なるべく対応せずに済む方法を模索することが優先される傾向がありました。
『いずれ対応しなければならないのであれば、早めに解決した方が良い』
そう思って提案しても、『リスクがある』『前例がない』といった理由で、なかなか受け入れてもらえません。
例えば、住民から苦情の電話があったとします。私は、すぐに状況を把握し、対応策を検討しますが、組織としては『本当に対応する必要があるのか』『他の部署に任せられないか』といった議論に時間がかかります。
もちろん、慎重な判断も大切です。しかし、あまりにも慎重になりすぎると、対応が遅れ、住民からの信頼を失いかねません。
『やる方法を探す前に、できない理由が出てくる』
そんな組織の姿勢に、私は大きなモヤモヤを感じていました。
理由2 やる気を失う出来事3つのエピソード

①正しく伝わらない上司の意図
組織の中で、上司の意図が正しく伝わらない。そんな経験は、ありませんか?私がいた職場では、中間管理層が上司に忖度するあまり、意図を曲解してしまうことが頻繁にありました。
例えば、上司が『評価を行うための資料を作成して欲しい。客観的な数値に基づいて序列化することが目的』と指示したとします。しかし、中間管理層を通すと、『上司が喜びそうな、綺麗な資料を作成してほしい。』という指示に変わってしまうのです。上司の意図を深読みして、求められていないオプションが付いてしまいます。
上司の意図がダイレクトに届かないため、中間層の考えがプラスされ、全く違う意思表示になっているのです。
ある時、私は試しに、直接上司から言われていたものと全く違う資料を、直接上司に提出してみました。すると、上司は『まさにこんな資料が欲しかった』と、大変喜んだのです。
この経験から、中間管理層が上司の意図を正しく理解していない、あるいは意図的に曲解しているケースがあることを痛感しました。
中間管理層も、上司の顔色を伺い、自分の立場を守ろうと必死なのかもしれません。しかし、その結果、組織全体の意思疎通が阻害され、本来の目的からかけ離れた方向に進んでしまうことは、大きな問題です。
②本省や地方の出先機関の主要幹部を見てがっかり
本省の小役人(キャリア官僚)と地方組織の太鼓持ちには、本当にうんざりしました。
東大卒のキャリアは、財務省や経産省に行けなかったひがみなのか、やたらと自分組織を二流官庁と言っていました。東大以外のキャリア官僚は、東大卒に引け目を感じているのか、なんとか相手を出し抜こうと必死です。そんな彼らの姿を見ていると、なんてつまらないところにこだわっているのかとうんざりしました。
地方組織では、上司に忖度する太鼓持ちの存在にがっかりしました。彼らは、強すぎる上司に忖度し命令を忠実に実行しようとし、組織全体のことを考えているようには見えませんでした。
『こんな人たちと一緒に働いているのか…』
そう思うと、仕事へのモチベーションは著しく低下しました。
もちろん、全てのキャリア官僚や地方官吏がそうだとは思いません。しかし、組織の中にそのような人がいることは、組織全体の士気を下げ、組織の成長を阻害する要因になることは間違いありません。
③政治家に対する失望と不信

私が公務員として働いていた時、政治に振り回される仕事に嫌気が差したことが何度もありました。特に忘れられないのは、2009年の民主党政権の時です。政権交代によって、それまで進めていた事業が大量に潰されました。
自分たちの支持を得るために、公務員叩きが盛んに行われました。『ヒアリングと言うなの公開リンチ』『叩かれても文句を言えない公務員』などがあったのか、毎日のようにメディアで「悪の権化の公務員を叩く政治家達の様子」が流れました。しかし、公務員を叩いたところで、国民の生活は何も良くなりませんでした。
国会議員にも様々な人がいます。中には、自分でまともに質問もできないような、いわゆる『アホな政治家』もいました。その秘書から、的外れな質問状が届いた時には、本当に情けなくなりました。『こんな人たちが国を動かしているのか』と、心底失望しました。
自分たちを正当化するために、公務員を悪と定義する政治家たちに、嫌気が差しました。彼らは、自分たちの都合の良いように、公務員をスケープゴートにしているだけです。
行政は立法・司法とならんで、三権分立にあると考えていますが、政治家の所業は行政が立法府の下にあるかのような扱いと感じました。
公務員の仕事は、国民全体の奉仕者として、公平公正に行うべきものです。しかし、政治に振り回される現状では、その理想とかけ離れていると感じました。
こんな経験、ありませんか?共感できるリアルエピソード

公務員の仕事は、残業が多いというイメージがあるかもしれません。しかし、実際には、残業しても残業代が満額支給されないケースが少なくありません。
私は2022年4月まで公務員として働いていましたが、私が経験した職場では、人件費があらかじめ決められており、その範囲内でしか残業代が支給されないというルールがありました。そのため、どれだけ残業しても、残業代は予算の枠までしか支給されず、それ以上の残業はいわゆるサービス残業ということになります。
『本当はやらなくて良い仕事、すでに終わっている仕事が、組織のせいで残業しなければならない。だから働いているのに、なぜ賃金が支払われないのか…』
そう思うと、仕事へのモチベーションは著しく低下しました。疲労感も蓄積し、心身ともに疲弊していきました。
仕事に求めるものを見つめ直す

転職を考えたとき、自分が仕事に何を求めているのかを改めて見つめ直すことはとても大切です。「どんなときにワクワクするのか?」「どのような仕事にやりがいを感じるのか?」こうした問いを自分に投げかけることで、本当にやりたいことが見えてきます。
楽しいと感じる瞬間を振り返る
私自身、仕事の中で最も楽しいと感じる瞬間は「何かの作業に没頭しているとき」でした。特に、より働きやすい環境を作るために、業務フローを改善したり、新しい方法を試したりする作業には大きなやりがいを感じました。自分の工夫が仕事の効率化につながり、求める答えがスムーズに出たときを考えながら仕事に打ち込んでいる時は、とても充実した時間でした。
苦痛に感じる仕事とは?
一方で、私が苦痛に感じたのは「変えられるのに変えられない」「無駄だとわかっているのに続ける必要がある」ような業務でした。例えば、非効率的な手順が長年の慣習として続いていたり、合理的な改善が見送られる職場環境では、大きなストレスを感じました。このような状況にいると、仕事に対するモチベーションがどんどん低下してしまいます。
「このままでいいのか?」と思ったときに考えたいこと

私がもやもやを感じていたときに、考えたことは次の2つです。
やりがいを感じない仕事を続けることの意味
まず、自分がやりがいを感じずに仕事をしている状態は、決して幸せなことではないと認識することが重要です。多くの人は「仕事とはそういうものだ」「みんな同じように我慢している」と考えがちですが、それが本当に自分の人生にとって良い選択なのかを改めて考えてみました。
やりがいのない仕事をする姿を、胸を張って親や家族に見せれるか?と考えてみました。そんな情けない姿は人に見せたくないとわたしは感じました。
自己犠牲の精神で守るべきものとは?
「今の仕事を続けることで家族を養えている」「安定した収入がある」などの理由で、不満を抱えながらも現状を維持する人は少なくありません。しかし、その自己犠牲がどれほどの意義を持つのか、自分に問い直すことが大切です。我慢を続けることで心身に負担がかかり、結果的に仕事のパフォーマンスや家庭生活に悪影響を及ぼすことも考えられます。
私自身、楽しそうでない、つらそうな人がいると自分も楽しく感じられないようになります。自己犠牲の精神では周囲を幸せにすることは無いのだろうと考えました。
これからの選択肢を広げるためにできること

自分のやりたいことが仕事にできるとなったら、最高じゃありませんか?
ただ漠然と好きなことをやればいいというものではありません。
きちんと自分の価値観とマッチングさせる必要があります。そのために準備することを紹介します。
自分のやりたいことで生活するには?
やりたいことで生活するためには、実施することは次の4点です。
- 自己分析をする – どんな仕事にやりがいを感じるのか、人生そのものを棚卸しをする。過去生きてきた中で一番没頭したことを思い出す。思いかけずついついやってしまうことなどを考えてみるといいでしょう。自分の持っている価値観や、好きなことや得意なことが見えてきます。
- スキルを磨く – 必要なスキルを身につけるための学習や資格取得を検討する。ここで大切なのは、世の中のニーズに合わせるためのスキルではなく、自分のやりたいことを実現するためのスキルを磨くことです。
- 副業や小さな挑戦を始める – いきなり転職するのではなく、副業やプロジェクトを通じて新たな可能性を探る。これは公務員では正直難しいと思いますが、やりようはいくらでもあります。株式投資もできますし、不動産収入なら兼業として認められることもあります。また家族を事業主として副業を実践してみることも可能です。
- 転職や独立を視野に入れる – 新しい道を選ぶための情報収集を行い、実際に行動に移す。特に在職時から容易にできるのは転職活動です。転職活動を通じ、自分の価値や、経歴の棚卸しをすることで自分が本当にやりたかったことや、才能が見つかるかもしれません。
仕事のやりがいや楽しさを重視することで、次のキャリア選択がより充実したものになります。転職を考える際には、単に条件や待遇だけでなく、「自分がどんな仕事を楽しいと感じるのか?」をしっかり見極めることが大切です。
まとめ

筆者は22年間、防衛省事務官として働いていましたが、公務員組織の硬直性に違和感を抱き、転職を決意しました。本記事では、公務員を辞めるに至った 2つの理由 と 3つの出来事 について詳しく解説しています。
1. 公務員としての安定とモヤモヤの狭間
公務員は収入の安定、解雇リスクの低さ、充実した福利厚生、社会的信用の高さといったメリットがある一方、成果を上げても評価されにくい環境があることに不満を感じていました。仕事に 「やりがい」「充実感」「達成感」 を感じにくかったことが、転職を考え始めたきっかけでした。
2. 転職を決意した2つの理由
① 自分の価値観とのズレ
- 業務改善の壁:提案が形骸化し、現実的な改善が難しい
- プロセス重視の文化:目的よりも手続きが優先され、新しいアイデアが受け入れられにくい
- 問題解決の遅れ:「できる方法」ではなく「できない理由」を探す風潮
② やる気を失わせる出来事
- 上司の意図が正しく伝わらない:中間管理層の忖度が意思疎通を阻害
- 幹部の姿勢にがっかり:キャリア官僚の競争意識や地方組織の忖度文化に失望
- 政治に振り回される:政権交代による方針変更や公務員バッシングに嫌気
3. 転職を後押ししたリアルな出来事
- サービス残業の横行:残業しても予算の範囲内でしか支給されず、モチベーションが低下
- 前例主義の組織:現状維持が優先され、変化を嫌う体質
- 政治の影響を強く受ける:公務員をスケープゴートにする政治家に失望
さいごに
わたしは、公務員としての 安定 を捨て、自分の価値観に合った仕事を求めて転職を決意しました。
「公務員は本当に安定なのか?」、「やりがいのある仕事とは?」と悩んでいる人にとって、本記事は一歩を踏み出すヒントになればと思います。
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