国家公務員と言ってもいろいろな職場があります。他の公務員とひときわ違うのが防衛省・自衛隊です。軍隊といえばものものしく感じるかもしれませんが、外国から見た場合れっきとした軍隊です。
そこで働いている事務官は何をしているのか?わからない人は多いかと思います。自衛官についてはテレビや雑誌などのメディアで取り上げられることも多いですが、事務官については就職ガイドぐらいでたまに見かけるぐらいです。
防衛省の事務官として22年働いた経験をもとに、防衛省事務官について説明します。
この記事を読むことによって防衛省で働く事務官についてわかります。
防衛省事務官の5つの質問
防衛省で働いている時、人と会うと「どんな仕事しているの?」「事務官も射撃や草をつけて訓練するの?」とよく聞かれました。
当時は、説明が面倒であまり話しませんでしたが、防衛省という組織が他の役所とは異質で、更にそこで働く事務官について情報が少ないので、よくわからないと思うのも仕方がないと最近思うようになりました。
家族・親族・学生時代の友人などからよく聞かれた質問5つはこれです
- 防衛省の事務官は何をしているの?
- 防衛省の事務官は防衛省職員?自衛隊員?
- 防衛省の事務官と他の公務員とは何が違うの?
- 防衛省の事務官以外には事務官しかいないの?
- 事務官として防衛省で働くには?
それでは、質問に一つずつ答えていきます。
質問1 防衛省の事務官は何をしているの?
防衛省の事務官は「防衛事務官」と呼ばれます。事務官とは書いて字のごとく、事務を専門に行う人です。防衛省の本省や、陸海空自衛隊部隊、防衛大臣直轄の機関など、様々な機関でところで働いています。
多くの事務官は、自衛官と一緒に働く場面が多く、業務の内容も多岐にわたります。事務を専門にしているので、オフィスビルの中にいると思う人もいるかも知れません。
私自身、採用面接が街中の合同庁舎ビルの会議室でありましたので、自分自身も「スーツを着てこんなところで働くんだろうな〜」と思っていました。
私は陸上自衛隊で採用されましたが、駐屯地業務隊の厚生科というところで、健康保険証の係を担当しました。そこでは、定期的に「草刈り作業」があり、スーツをきての事務仕事の他に作業服を着て草刈りをしました。
事務官は事務i事のほか、草刈りなどの作業もやります。逆に自衛官も事務仕事をします。事務官でできないのは、射撃ぐらいでしょうかね。
事務の分野も様々で、
- 総務の仕事
- 文書管理
- 調達・会計
- 予算要求
- 補給
- 法務(賠償・補償)
- 栄典(叙位叙勲)
- 秘密保全
- 国民保護や災害対処
- 募集・採用
- 広報
- 苦情処理
などを担当します。
自衛隊自体が、自己完結型の組織なので、それに携わるためいろんな業務を担当する可能性があります。
質問2 防衛省の事務官は防衛省職員?自衛隊員?
防衛省職員か自衛隊員かどっち?これもよく聞かれます。
事務官は通称背広組とも呼ばれることもあって、事務官は職員で、自衛官は自衛隊員と定義している人も見かけますが、正確には正しくありません。
事務官も自衛官も防衛省という行政機関に属する「防衛省職員」です。防衛省職員には、防衛大臣から一般の隊員、事務官などが含まれます。(防衛省設置法)
一方で自衛隊員とは、自衛隊法で定義されており、自衛隊員は防衛省職員の一部として扱われ、自衛官と事務官等※に区分されます。(自衛隊法)

※自衛官以外には事務官の他に技官などがいるため、自衛官等と区分されます。詳しくは、「質問4 防衛省の事務官以外には自衛官しかいないの?」で解説します。
防衛省職員の一部として自衛隊員がいるということです。なので自衛官も事務官も自衛隊員であって防衛省職員の一部なんです。
質問3 防衛省の事務官と他の国家公務員とはなにが違うの?
防衛省の事務官と他の国家公務員の違いは、防衛省の事務官は国家公務員特別職にということです。多くの国家公務員は、一般職と呼ばれます。
正確に言うと国家公務員特別職には、防衛省職員の他に内閣総理大臣や国務大臣、裁判所職員や国会職員など約30万人ほどいます。そのうち自衛官を含む防衛省職員は約27万人と国家公務員の特別職の大部分を占めます。次は裁判所職員(2.5万人)です。
このほかに挙げると
- 採用時に宣誓する「服務の宣誓」が一般的な公務員とは異なる内容である
- 労働組合が無いのでストライキもない
- 実際に担当する業務の幅が広い
- ときには作業服をきて自衛官と一緒に作業をする
- 部隊の演習に参加することもある
などなど・・・挙げればキリがありません。
「服務の宣誓」は公務員としての心構えですが、一般職と防衛省ではちょっと雰囲気が違います。
一般職の服務の宣誓
「私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。」
防衛省(自衛隊員)の服務の宣誓は
「私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。」となります。
要約すると、一般職は国民全体の奉仕者として憲法を遵守し、公正に職務を遂行するということを言っています。
これに対し防衛省の事務官は
- 我が国の平和と独立を守ることを自覚
- 一致団結
- 厳正な規律
- 徳操を養う
- 人格を尊重する
- 心身の鍛錬
- 政治的活動に関与しない
- 事に臨んでは危険を顧みず身をもって責務の完遂に務める
ボリュームたっぷりです。
一般職よりは規律に厳しい組織で、自衛官も事務官も同じ気持ちで仕事に臨むということになります。私は政治的活動に関与しないために、面倒な選挙応援などがなかったのは助かりました。
この他、自衛隊は自己完結型の組織なため、自衛隊が運行する車両のうち、6桁ナンバー車両には任意保険がかけられず、車両事故の際は、民間の保険屋さんと同じ仕事、示談交渉や保険金の支払業務を行いますので、保険請求の仕組みなどが分かります。
なぜ6桁ナンバー車両に任意保険がかけられていないかというと、相手方への賠償は国家賠償法に基づき行われるためです。
実際私も担当しているとき、車両事故2件と人身事故1件が発生し苦労しました。
質問4 防衛省の事務官以外には自衛官しかいないの?
防衛省には大きく自衛官と事務官がいますが、その他には「技官」や「教官」「情報収集」「通訳」を担当する「専門職」がいます。この、「事務官」「技官」「専門職」を「事務官等」と読んでいます。
区分と担当する分野はこのようになります。
事務官 | 総務、人事、厚生、会計、法務、補給管理、営繕(管財) |
技官 | 営繕(工事企画、施設管理)、補給整備、情報処理、研究開発、OR(ペレーションリサーチ) |
専門職 | 情報収集、教官、通訳 |
技官や専門職の職員は、専門性の高い仕事を担当することが多く、転勤の頻度や場所が限られやすくなります。
質問5 事務官として防衛省で働くには?
事務官として防衛省で働く方法としては
- 国家公務員の採用試験を受ける
- (技官だけど)駐屯地の採用試験を受ける
- 経験者採用で転職する
が主な方法です。
国家公務員試験を受験し、防衛省から内定をもらうというのが一般的ですが、専門職を受験する場合は、防衛省が独自に実施する防衛省専門職採用試験を受けることになります。専門職採用試験受験者は官庁訪問がありません。
たまにしか求人が出ませんが、駐屯地や基地単位で採用になる技官の募集があります。電気技師や水道工事、木工所の勤務や栄養士などを募集しています。ただし、欠員補充がメインのため、いつ求人が出るかわからないことや、国家公務員採用試験や防衛省専門職採用試験で採用になる人達とは給与体系が違い、給料は低めです。
最近では中途採用や経験者採用にも力を入れており、転職求人サイトなどに求人が出ています。こちらの業務の幅は広く、業務の難易度によって給与が変化します。なかには海外出張が伴うような求人も出ています。
まとめ
公務員の中で仕事内容がわかりにくい防衛省の事務官について説明しました
防衛省の事務官は
スーツを着て事務仕事だけではなく、時には作業服を着て自衛官と一緒に草刈りなどの作業もします。
また担当する事務の範囲は総務や人事のほか、補給整備、営繕(施設管理など)、翻訳、教官など色んな仕事を担当します。
防衛省の事務官は防衛省職員なのか自衛隊員なのか?
「防衛省職員でもあり自衛隊員でもある。」です。職員と隊員の定義の根拠となる法律で呼び方がかわります。なので「背広組=職員」「自衛官=隊員」というのは性格には正しくなく「事務官(背広組)・自衛官=職員・自衛隊員」です。
防衛省の事務官と他の公務員との違い
防衛省の事務官は国家公務員特別職に分類されます。また、労働組合がないというのも他の一般的な公務員とは異なるところです。
防衛省の事務官以外の文官
技官や専門職(情報収集、教官、通訳)などの方もいます。まとめて事務官等とも言われます。事務官が事務一般を担当するのに対し、技官は技術系の仕事、専門職は、語学などを使った仕事を担当します。
事務官として防衛省で働く方法
国家公務員採用試験を経て防衛省に採用される他、駐屯地や基地が募集する求人に応募する方法や、経験者を対象にしている、転職サイトなどの求人から応募し採用される方法があります。
一般的な公務員とは違った環境で働く、防衛省の事務官について、興味が湧いた人は応募してみるのもいいと思います。
【参考】
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